ユング心理学の視点から見た日記。スーパー戦隊シリーズ キョウリュウジャー、トッキュウジャー、東のエデンのレビューと感想。エニアグラム、子どもが育つ魔法の言葉、話が通じない人の心理、自分に気づく心理学。ドラマやアニメから学ぶ人生観。
 
ミヒャエル・エンデ作

モモ
時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語


そのレビューと感想



第16回「演説と消される声」


(第8章「ふくれあがった夢と、すこしのためらい」より、その中編)


つぎの日の、午後三時になった。

円形劇場のあとには、おおぜいの人の声がきこえる。

興奮(こうふん)してさけび声をあげる人、となりの者となにやら話す人。

でも、その中には、おとなのむかしなじみさんは、いませんでした。

ベッポとジジをのぞいては。


でも、子どもたちは、五、六十人はいるようでした。

遠くの子に近くの子、大きい子に小さな子、お金持ちの子に びんぼうな子、いろんな子が集まっている。

あの、トランジスター・ラジオの男の子のすがたも見えました。

でも、きょうはラジオを持っていない。

彼はモモのそばにすわると、さいしょにこう言いました。

ぼくの名前はクラウディオ、なかまに入れてもらえてうれしい。


小さい子こそぼんやりながめていましたが、おおむねみんな、これから起こることに興味しんしんなようでした。

みんな何が起こるのかと、まちかまえている。


もう、これ以上おくれて来るひともいないだろう。

ジジは立ち上がると、みんなに静粛(せいしゅく)をこいました。

すると、子どもたちの集まりですが、大人たちがそうするように、みんな静まりかえった。


「親愛なる友人諸君」

ジジは、そう話しはじめた。

みんなが知っているように、さいきんではおおぜいの人たちが、時間を倹約(けんやく)するようになってきている。

が、それなのに、時間はなぜか、少なくなっている。

「いいか、みんな」と、ジジはその理由を説明しました。

倹約した時間は、人間から、うばわれてしまっている。

そのわけを、モモが見つけ出した。

「この時間は、文字どおりの時間どろぼう団にぬすまれているんだ!」

ジジは、演説を続けます。

このどろぼう団に悪事をやめさせるために、みんなの力をかりたいと思う。

もし、みんなが力をあわせるなら、人間にふりかかったこんな災難(さいなん)など、いっぺんで吹きとばせる。

「やりがいのあるたたかいだとは思わないか?」


ジジの問いかけに、みんなはワーッと手をたたくことで、こたえた。


どうしたらいいかを相談する前に、ジジはモモに、灰色の紳士と会ったときのことを話してもらおうとしました。

が、ベッポじいさんが、それをとめた。

ベッポは、子どもたちに話しかけました。

いいか、聞いてくれ。モモに話させることは反対だ。それは、まずい。

モモが話したら、モモじしんも、みんなも、ひどい危険におちいることになる。


が、ベッポの意見は、子どもたちには受け入れられませんでした。

それどころか、モモの話が聞きたいと、モモの名を大合唱されてしまった。


ベッポじいさんは腰をおろすと めがねをはずし、つかれきったように、指でまぶたをこすりました。


困ったのは、モモです。

ベッポと子どもたち、どちらのねがいを聞き入れたらいいんだろう。

モモは、とほうにくれたまま、立ちあがった。

そしてけっきょく、話をはじめることにしました。


子どもたちは静まりかえって、モモの話を聞いた。

また、話が終わったあと、長い沈黙(ちんもく)がつづきました。


話を聞いているうちに、みんな、こわくなってしまったのです。

時間どろぼう団とはそんなにきみのわるいものだったのかと、思った。


しずけさをやぶって声をだしたのは、ジジでした。

どうだい? とジジはみんなに聞いた。

おれたちといっしょに灰色の男たちとたたかう勇気ある人はいないか?


でも、どうしてベッポはモモに話をさせたがらなかったの?

フランコという子が、そう聞きました。


ジジは笑いかけながら答えます。

ベッポは灰色の男たちが秘密を知った人間を危険とみなし、ただじゃおかないだろうと心配している。

でも、おれは反対だと思うよ。

秘密をにぎっている人はかえって安全で、やつらは手なんか出せない。

「そりゃもう、はっきりしてるさ! そうじゃないか、ベッポ!」


ジジがそう言っても、ベッポはゆっくりと頭をふっただけでした。


子どもたちがだまりこむと、ジジは言った。

「どっちにしろ、ひとつのことだけはたしかだ」

みんな、生きるも死ぬもいっしょと覚悟(かくご)して、団結(だんけつ)しなくちゃならない。

慎重(しんちょう)にやる必要はあるけど、びくついちゃいけない。

だからもういちど聞くと、ジジは言いました。

「おれたちといっしょにたたかう人はいないか?」


ぼくはやる! と声をあげたのは、クラウディオでした。

すこし青い顔をしている。


それに続くようにして、みんなが名のりをあげはじめました。

はじめはおずおずと、だんだんときっぱりとした態度になってゆく。

さいごには、出席者全員が、名のりをあげた。


「どうだい、ベッポ」と、ジジは言った。

「これをどう思う?」


わかったと、ベッポは、かなしそうに、うなづきました。

「もちろんわしもやるよ」と。





モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)






<感想>


人は一人ひとり、気持ちや意見を持ちます。

人が集まると、そんな一人ひとりの気持ちや意見も、集まる。

集会とは、共通の目的のために、多くの人が集まること。

なので、テーマが絞られる。

気持ちや意見は、限定されたものになるようです。


気持ちも、言葉も、人間の中から出るもの。

流れ出るもの。

たくさんの人が集まると、その流れは時に、激しいものとなる。

はじめ静かでも、同じような気持ち、同じような意見が集まれば、小さな流れが集まって川になるように、時に濁流になるように、激しい流れが形成されることも少なくありません。

まるで渦のようになることだって、ある。


ジジを先頭に、子どもたちは灰色の男たちと戦うことを選んだ。

ベッポの心配は、そんな流れにかき消されてしまいました。

みんなだって、怖さがなかったわけではない。

心配だって、抱いていたでしょう。

でも、いったん強い流れが形成されてしまうと、もうなかなか、抵抗できません。

善も悪もなくなって、どうしようもなくなるのです。


人の声は消され、気持ちだって、消される。

特に少数の声は消されるし、一人ひとりの人間の中にあるちょっとした気持ちも、隠されてしまうようです。


流れは、力。

それが必要な時も、それが有効に働くことも、あります。

ただ、そればかりとも、限らない。


ベッポは、確かめないことで結果ウソになることが、世の中の不幸を生むと考えています。

それは、すごく正しい。

でも、どんなに正しいことも、強い流れには消されてしまうのです…





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Author:南方 城太郎
生息地:関西
分類:昭和人間
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黒電話、赤電話が主流で、冷房は扇風機、暖房は石油ストーブと炬燵という時代


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