ユング心理学の視点から見た日記。スーパー戦隊シリーズ キョウリュウジャー、トッキュウジャー、東のエデンのレビューと感想。エニアグラム、子どもが育つ魔法の言葉、話が通じない人の心理、自分に気づく心理学。ドラマやアニメから学ぶ人生観。
 
ミヒャエル・エンデ作

モモ
時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語


そのレビューと感想



第10回「追われる大人と、追われる子ども」


(第7章「友だちの訪問と敵の訪問」より、その1)


灰色の男たちの影響は、モモの近くにも、あらわれるようになっていました。

ある日、モモは気づいた。

あたしたちの古いお友だちが、だんだん来なくなったような気がする。

もう、ずっと会ってない人だって、たくさんいる。


それは、観光ガイドのジジも、感じていたことでした。

ジジの話を聞きにくる人も、だんだんへってる。

「もう、いぜんみたいじゃなくなった。なにかが起こったんだ」

ジジはそう言いました。


でも、なにが起こったんだろう?


やがて道路掃除婦のベッポが、ゆっくりと口をひらきました。

「そうだ、そのとおりだ。こっちにも近づいている」

「町じゃ、もうすっかりそうなっちまった。ずっとまえから気がついてたんだがな」

それは、いいことではないという。

ベッポは、「冷えてくるぞ」と言った。


円形劇場には、前よりたくさんの子たちが、遊びにくるようになっていました。

でもそれは、モモたちに会いに来るんじゃないんだと、ベッポは言います。

「ただ、かくれ場がほしいだけなんだ」と。


円形劇場のまんなかの草原では、たくさんの子たちが遊んでいる。

その中には、モモたちが知っている子も多い。

でも、ほんの数日まえに来るようになった子もいるし、今日はじめて来た子さえいました。


子どもたちが増えるのは、いいこと。

でも、あたらしく来た子たちは、遊ぶことのできない子たちでした。

みんなたいくつそうにして、ほかの遊んでいる子をながめている。

時にはじゃまをして、ほかの子の遊びをだいなしにしてしまいます。

けんかや仲たがいをすることも、ありました。

ただ、モモがいることで、この子たちにもいい影響がでます。

はじめそうでも、だんだんと遊びを考え出すようになり、やがてみんなと夢中で遊ぶようになった。


ところが、あたらしい子が来るようになるスピードは、じんじょうではありませんでした。

次から次へと、あたらしい子があらわれる。

そのたびに、遊びをじゃまされたりと、同じことがくりかえされます。

これはちょっと、こまりますね。


ほかにも、気になることがありました。

子どもたちが、今まで持ってなかったような、おもちゃを持ってくるようになっていたのです。

それはラジコン戦車だったり、細い棒の先でくるくる回転しながら飛ぶロケットだったりした。

目から火花を出すロボットを、持ってくる子もいました。

これらは、高価なおもちゃ。

でも、同時に、それ以上、空想をはたらかせる余地がありませんでした。

子どもたちはそれを使って、物語をつむぎだすことができなかったのです。

完成されているおもちゃなので、決まっていること以上のものを、なかなかつけられなかった。


ある日の夕方も、子どもたちの遊びは、うまくいかないようでした。

そのうちみんなあきらめて、モモやジジ、ベッポのまわりにすわりだした。

ある子がジジにお話をせがみましたが、これもだめでした。

きょうはじめて来た小さな男の子が、トランジスター・ラジオを持って来ていたから。

その子はみんなとは少しはなれた場所にすわって、ラジオを音量いっぱいにかけている。


ある男の子が、ラジオのボリュームを小さくするように言いました。

イライラしていたようで、かみつくようにして言った。

でも、きょうはじめて来た小さな男の子は、言うことを聞きません。

誰もとやかく言う権利はない、ラジオの音を大きくしようとぼくのかってさ、そう言った。


ベッポは、「それはそうだ」と言いました。

「あの子に禁止することはできない。せいぜいたのむことができるだけだよ」と。

それに、あの子がじゃまするのには「きっとわけがある」と言う。


ベッポがそう言うと、男の子はだまりました。

そしてしばらくすると、ラジオの音量をさげた。

顔をそむけて、どこかをじっと、ながめています。


モモがあたらしく来た男の子のそばにだまってすわると、男の子はラジオのスイッチを切りました。

そして、ジジに言った。

「ねえ、ジジ、なにかお話して!」


みんなも大賛成しましたが、こまったことに、ジジは話す気になれませんでした。

こんなことは、はじめてだという。


ジジはぎゃくに、みんなの話を聞きたいと言いました。

みんなどうして、こんな風なのか?

なぜ、ここに来るようになったのか?


すると、きゅうにみんなの顔が、くらくなりました。

どこか、よそよそしくなった。


しばらくして、ある子どもが口をひらきました。

その子の家では、りっぱな自動車を買ったのだという。

土曜日にパパとママとがひまだと、自動車を洗う。

いい子にしていると、その子も自動車を洗わせてもらえる。


小さな女の子は、行きたければ毎日でも映画に行けるといいます。

家の人はみんないそがしいので、そのかわりに映画を見るお金をもらえるのです。

でも、そんなのいやなので、その子はないしょで貯金していました。

お金がたまったら、汽車の切符を買って、七人のこびとのところへ行くのだという。


ある子は、お話のレコードを十一枚も持っていると話した。

前はパパが夜話してくれたけど、今はくたびれてお話する元気がないのだそう。


そんな中、フランコという男の子は「ほんとうはうれしいんだ」と言いました。

ただし、顔はちっとも、うれしそうじゃない。

両親はいそがしくて、おれをかまうひまがなくなった。

ひまだとすぐけんかするし、おれはぶんなぐられるはめになる。


急に、トランジスター・ラジオの男の子が、声をあげました。

「でもぼくはな、ぼくはまえよりずっとたくさんおこづかいをもらってるぜ!」


が、フランコは、それはおとなたちがおれたちをやっかいばらいするためなんだ! と言いました。

「おとなは、子どもたちがいやになったんだ。でも、おとなじしんのこともいやになってる。なにもかもいやになってる。これがおれの考えさ」


トランジスター・ラジオの男の子は、なんとか反論しようとしました。

親はぼくのことをだいじに思ってる。

ただ、いそがしいだけだ。

その証拠に、こんなに高いラジオを買ってくれた。


しかしやがて、男の子は泣きだしました。

ほかの子たちも、たがいがかさなったのか、涙をながす子もいました。

だれもが、泣きたくなった。

みんな、じぶんが見はなされた子どもだと、感じていたのです。


しばらくして、ベッポが言いました。

「そうだ、だんだん冷えてくるんだ」





モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)






<感想>


モモのいる円形劇場に、子どもたちが集まるようになっていました。

でも、それは集まるというよりは、追われて来たようなものだった。

いうなれば、そこしか行くところがなかったのです。

ベッポは、「ただ、かくれ場がほしいだけなんだ」と言った。


時間に追われ、仕事に追われ、生活に追われる、大人たち。

追われに追われすぎて、子どもたちと話す時間も、遊ぶ時間も、顔を見る時間さえ、無いのかもしれません。

これでは時間を節約しているのか、時間の奴隷になっているのか、分からない。


そして、追われるのは、大人たちだけではないようでした。

子どもたちは、家をなくし、親をなくし、モモのいる広場に集まってきた。

集まるしかなかった。


お金やおもちゃは、あるようです。

形としての家や、戸籍上の親や、そういうものは、あったみたい。

でも、本当の家や、本当の意味での親は、どうだろう?

子どもがちょっと、あってほしいなと思う家や、こうしてほしいなと思う親は、どうだろう?


人間、なかなか思うようにはいきませんが、何から何まで無い無いづくしだと、

大人であれ、子どもであれ、やりきれませんね。



さて、現代を生きる我々は、いったい何に、追われてるんでしょうか…





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Author:南方 城太郎
生息地:関西
分類:昭和人間
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黒電話、赤電話が主流で、冷房は扇風機、暖房は石油ストーブと炬燵という時代


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