ユング心理学の視点から見た日記。スーパー戦隊シリーズ キョウリュウジャー、トッキュウジャー、東のエデンのレビューと感想。エニアグラム、子どもが育つ魔法の言葉、話が通じない人の心理、自分に気づく心理学。ドラマやアニメから学ぶ人生観。
 
ミヒャエル・エンデ作

モモ
時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語


そのレビューと感想



第8回「時間貯蓄銀行と もったいない時間」


ここからは、第2部。

(第6章「インチキで人をまるめこむ計算」より、その前編)


モモの第2章、そのはじまりでは、とても不思議な、それでいてきわめて日常的なある秘密について、教えてくれています。

それは、時間について――



 時間をはかるにはカレンダーや時計がありますが、はかってみたところであまり意味はありません。というのは、だれでも知っているとおり、その時間にどんなことがあったかによって、わずか一時間でも永遠の長さに感じられることもあれば、ぎゃくにほんの一瞬と思えることもあるからです。
 なぜなら、時間とはすなわち生活だからです。そして人間の生きる生活は、その人の心の中にあるからです。

(P75)



このことを他のだれよりよく知っていたのは、灰色の男たちでした。

彼らは、一秒のねうちさえ、よく知っていた。

でも、大切さを知っているのと、それをどうあつかうのかは、またべつもの。

灰色の男たちは、ちょうど吸血鬼が血の価値を知っているのとおなじように、彼らなりに時間の大切さを理解し、彼らなりの時間のあつかい方をしたのです。


彼らは、人間の時間に対し、ある計画をたてていました。大々的な、それでいて慎重にねりあげられた計画です。

そんな彼らが一番気をつけていたことは、自分たちの行動を、だれにも気づかせないこと。

灰色の男たちは、目立たないように大都会の人々のくらしの中にしのびこんでいた。そして、気づかれないように、日毎にふかく、社会にくいこんでゆく。

そして、人間の財産に、手をのばしはじめました。



市の中心部に、フージー氏の床屋(とこや)があります。

ある日、その床屋の前に、灰色の自動車が停まりました。

降りてきたのは、全身が灰色ずくめの紳士。

その紳士が、店の中に入って来た。

といっても、散髪にきたのではありません。その紳士は、テカテカのはげ頭でした。


紳士は抑揚(よくよう)のない――いわば灰色の声で――言いました。

「わたくしは時間貯蓄銀行から来ました。ナンバーXYQ/384/b という者です。あなたは、わたくしどもの銀行に口座を開きたいとお考えですね?」


でも、フージー氏は、そんな銀行、名前さえ聞いたこともない。

だから、知らないと答えました。


が、そんなことはおかまいなしに、灰色の紳士は話をすすめます。

いま聞いたから、いまはもうごぞんじだと言う。

灰色の紳士は、灰色の手帳を開き、フージーさんは わたくしどものお客さまの候補者なのだと説明しました。

彼は、言った。

フージーさん、あなたは、人生を浪費(ろうひ)している。このまま死んでしまえば、あなたはもともといなかったみたいに、みんなから忘れさられてしまうでしょう。もしも、ちゃんとした暮らしをしていたなら、いまとはぜんぜん違う人間になっていたのに。

ようするに、あなたが必要としているのは、時間なんでしょう? と。


フージー氏は、おどろきました。

この外交員が語ったことは、つい先ほど、店先でフージー氏が考えていたこととおなじだったから。


灰色の紳士は、灰色の葉巻をふかしながら、つづけました。

「でも、時間はどこから手に入れます?」

「倹約(けんやく)するしかないんですよ」

「フージーさん、あなたはまったく無責任にじぶんの時間をむだづかいしています」

そう話すと紳士は、灰色のえんぴつで、床屋の鏡の上に、数字を書きはじめた。


1分は、60秒。1時間は、60分。

1日は24時間で、1年は365日。

すると、1年は、365×24×60×60で、31,536,000秒になる。


仮にフージーさんが70歳まで生きるとして、これに70をかけると、

2,207,520,000秒。


ふだん見ることのない22億という数字に、フージー氏はめんくらいました。


紳士はこれを、フージー氏が持っている財産だと説明した。

でも、フージー氏はいま、42歳。

そして、今まで使ってきた時間というものがある。

まず、睡眠。

1日8時間として、42年間分。

計算すると、42×365×8×60×60で、441,504,000秒。

紳士はこれを、むだな時間だと言いました。


次は、仕事にかけている時間。

これも1日8時間です。

紳士は、同じ数字を損失勘定にいれると言った。


お次は、食事の時間。

これは3度の食事で、2時間。

42×365×2×60×60で、110,376,000秒。

1憶秒を超えています。


さらに、フージー氏には、生活があります。

年をとったお母さん相手におしゃべりするのが、毎日1時間。

42×365×1×60×60で、55,188,000秒。

紳士は数字を計算しながら、これも むだに捨てられた時間だと言いました。


ボタンインコの世話には、毎日15分。

42×365×15×60で、13,797,000秒。

灰色の紳士は、よけいなボタンインコと言った。


さすがにフージー氏も口をはさもうとしましたが、外交員は口出しをさせませんでした。

さらに、計算のスピードをあげていきます。


フージー氏のお母さんは体が不自由なため、フージー氏は買い物など、家事の一部をこなします。

これが、毎日1時間。

42×365×1×60×60で、55,188,000秒。

これも外交員は、むだな時間だと言った。


これ以外に、フージー氏は毎週1回は、映画に行く。

さらに毎週1回、合唱団の練習に出る。

週2回は、行きつけの飲み屋に行く。

本を読む時も、あります。

外交員はそれを、「ようするにあなたは役にも立たないことに時間を浪費して」と言った。

このようなことが、1日3時間。

計算すると、42×365×3×60×60で、165,564,000秒。


1億6千秒と聞いて、フージー氏は気分がどうにかなりそうでした。


そして灰色の紳士は、フージー氏の私生活における秘密まで知っていた。

フージー氏は毎日花をもって、ダリア嬢のもとを訪ねていたのです。

これに1日30分。

42×365×30×60で、27,594,000秒。

ダリア嬢は足がわるく、車いすの生活。

げんじょう、フージー氏との結婚はむつかしい。

だから外交員は、これも時間のむだだと言いました。

損失だと。


さらに外交員は、フージー氏が毎日ねる前に15分、窓のところで1日を思い返す習慣まで知っていました。

これが、42×365×15×60で、13,797,000秒。


鏡の上にはいつの間にか、計算表ができています。

睡眠、食事、仕事、母、ボタンインコ、買い物ほか、友人合唱ほか、秘密、窓、すべてを合計すると、1,324,512,000秒。

この13億という数字を、灰色の紳士は「あなたがこれまでに浪費してしまった時間」だと言いました。

そして、全財産の半分以上だとも。


灰色の紳士は、42年間という時間を、秒になおした。

42×365×24×60×60で、1,324,512,000秒。

そしてその下に、フージー氏が42年間で浪費した時間を書き、引き算しました。

1,324,512,000秒 - 1,324,512,000秒 = 0,000,000,000秒。


この数字を見て、フージー氏は、うちひしがれました。

計算に圧倒されて、逆らう気もなくなってしまった。


これこそが、灰色の男たちが使う、だましの手口。

でも、フージー氏は、それを知りません…





モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)






<感想>


灰色の男は、フージー氏の生活の中にいかに無駄な時間があるかを、数字を使って説明しました。

でも、無駄な時間って、何なんだろう?


その前に、灰色の男の計算は、どうもおかしい。

フージー氏の生活を調べ上げて、それを秒になおしただけです。

1日は、24時間で固定。

睡眠も勘定に入れるのだから、漏れはありません。

食事だの仕事だのプライベートの時間だの、それをすべて書き出すのだから、24時間ぴったりです。

そして、1日の時間である24時間から引くのだから、ゼロに決まっている。

灰色の男は、フージーさんの生活の一つひとつを、無駄だと決めつけただけです。

(それぞれの時間に名前をつけられるのだから、むしろ、無駄がないような気がしますが。ちゃんと使えているという意味で)



でも、ムダって、何だろう?

無駄とは、役に立たないこと、無益なこと、それをしただけの甲斐がないこと。

せっかくしたのに、効果がないこと。


人間は、目に見える効果がないと、無駄に思えることがあります。

でも、目に見えないものは、無駄だろうか?


人生には、「いつの間にか」ってことがあります。

やっているうちに、いつの間にか、うまくなったりする。

パソコンの使い方だって、そうでしょ?

目に見えるはやさで上達することはなくても、いつの間にか、使えるようになってたりしませんか?

これって、無駄だろうか?


もし、目に見えないものがすべて無駄なら、時間も無駄になりますよね。

だって、時間は目に見えないもの…





時間論 (ちくま学芸文庫)




人間らしさとはなにか?―人間のユニークさを明かす科学の最前線






 <<「(7) 魔法の鏡と、心臓の結び目」
    「(9) 手にしたものと、なくしたもの」>>




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生息地:関西
分類:昭和人間
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黒電話、赤電話が主流で、冷房は扇風機、暖房は石油ストーブと炬燵という時代


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