ユング心理学の視点から見た日記。スーパー戦隊シリーズ キョウリュウジャー、トッキュウジャー、東のエデンのレビューと感想。エニアグラム、子どもが育つ魔法の言葉、話が通じない人の心理、自分に気づく心理学。ドラマやアニメから学ぶ人生観。
 
ミヒャエル・エンデ作

モモ
時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語


そのレビューと感想



第6回「クジラの金魚と新しい地球の物語」


(第5章「おおぜいのための物語と、ひとりだけのための物語」より、その前編)


町の人たちから少し距離をおいて暮らしている、観光ガイドのジジ。

そんなジジに、かけがえのないもの、なくてはならない存在ができた。

それは、モモです。

気の変わりやすい、そして気楽な若者である、ジジ。

でも、モモに対しては、変わらぬ深い愛を抱くようになっていました。

いつも一緒にいたいと思うほどに。


実は他にも、ジジに変化があらわれるようになっていた。

もともとお話し好きのジジですが、今までは、物語を生み出すのに苦労していました。

それがモモと出会ってからというもの、泉がごとく自然とわきだし、また、翼(つばさ)が生えたかのように、物語が自由に舞いだした。

特に、モモがそばにいる時は、きわだちます。

いい考えがわいてきて、まるで花が咲くように、お話が次から次へと生まれてゆく。

そんな風だから、大人も子どもも聞きにきたし、話しているジジ自身が、ワクワクするほどでした。



ある日、円形劇場に、旅行者がやって来ました。

ジジはさっそく――作り話ではありますが――観光案内をはじめます。

その時モモは、少し離れた石段に座っていました。


クルシメーア・アウグスティーナ女帝は、ブルブル族とビクビク族のたえまない攻撃から国を守るために、数えきれないほどの戦争をしていました。

そして、戦争に勝って両民族を支配した時、敵のクサクソトラクソルス王に、王の大切にしている金魚を献上(けんじょう)するようにと命じた。

というのも、クルシメーア女帝は、クサクソトラクソルス王が、成長すると純金になる小さな魚を持っていると、耳にしていたからです。

ふつうならガッカリするところですが、クサクソトラクソルス王は、ほくそ笑みました。彼は本物の金魚を隠し、かわりにクジラの赤ん坊を、献上したのです。

金魚というには大きすぎる魚に、女帝はおどろきました。それに、色が金とは ほどとおい。しかし、クサクソトラクソルス王の使者は説明します。この魚はすっかり成長しきった時、はじめて金になるのです。それまでは金色にならず、また、さまたげられることなく成長させることが大切ですと。

魚が大きいということは、手に入る金も大きいということ。女帝は使者の言うことを信用し、魚を育てることにしました。

クジラの赤ん坊は、毎日たくさんのエサをたいらげる。女帝も、食べたいだけ、エサを与える。この調子ですから、クジラの赤ん坊はすぐにまるまる太り、はじめ入っていたスープ鉢(ばち)では、おさまらなくなりました。

「大きければ大きいほどいい」

女帝はそう言うと、魚を浴槽(よくそう)にうつさせた。

でも、魚はまたすぐ大きくなって、浴槽では小さすぎるようになりました。

なので、今度は、プールにうつした。

女帝は、プールの魚をながめながら、つぶやきます。

「大きければ大きいほどいい」

もともとお金持ちの女帝ですが、ぜいたくをするには、金はたくさんあったほうがいい。

「大きければ大きいほどいい」

女帝が何度もそうつぶやくので、それはやがて、この国のありとあらゆる基本方針となりました。


そのうちに魚は、プールでもおさまりきれなくなった。

そこで作らせたのがこの建物なのだと、ジジは説明しました。

この廃墟(はいきょ)は水槽(すいそう)だったのだと。


女帝は一日中、魚が金にならないかと、見張っていました。

あまりにもそれを気にしすぎて、今では誰も信用できなくなっていたのです。

でも、魚はいっこうに、金になる気配もなくおよいでいる。

それをずっと見守る女帝は、いつしか、国の仕事をないがしろにするようになっていました。


まさにそれこそが、ブルブル族とビクビク族のねらい。

彼らは今がその時と気づくと、クサクソトラクソルス王にひきいられて、最後の戦いを挑んだ。

そして戦争に勝利し、帝国の全土を、征服(せいふく)しました。

それは、あっという間のできごとだったといいます。というのも、誰も抵抗しなかったから。人民にとって、誰が支配しようと、同じだったのです。


このしらせを聞いてはじめて、女帝は自分のおろかさに気づきました。

そして、失意の中、この水槽に身を投げた。

クサクソトラクソルス王は勝利の祝いにとクジラを料理させ、8日間の間、ありとあらゆる人民にクジラ肉のステーキをふるまったのだといいます。


ジジは、こうむすびました。

「みなさま、人の言うことをあまり軽々しく信じるとどういうことになるか、これでおわかりでございましょう!」(P61)


多くの旅行者が感銘(かんめい)を受ける中、ひとりだけ納得いかない様子の人がいました。

その人はジジに、それはいつのことだったんですか? と聞いた。

けど、ジジは、すまし顔で返しました。

クルシメーア女帝は、かの有名な哲学者ノイオシウス父子の父親のほうと同じ時代の人です。

もちろんそんな人はいないのですが、言われたほうは、有名な哲学者を知らないとは言いたくなかった。

なので、ああそう、ありがとうとだけ、言いました。


こんな風にして、ジジはコインをかせいだのです。



ある日には、アメリカから来た中年婦人に、こんな話をしました。


その昔、<赤い王>とあだ名された、マルクセンティウス・コムヌスという世にも残虐(ざんぎゃく)な暴君(ぼうくん)がいた。

赤い王は、当時の世界を自分の思うように作りかえようとしました。

でも、けっきょく世界は同じままだし、人間というのはそう簡単に変わらないのだと、分かった。

やがてこの暴君は気を病み、妄想(もうそう)にかられるようになりました。

そしてついに、今ある世界など見捨ててしまって、完全に新しい世界をつくるほうがいいと、思いつきます。


王は人々に、これまでの地球とまったく同じ大きさの、新しい地球を作るようにと命じました。

何から何まで古い地球とそっくりな地球を、新しく作れというのです。

建物も、木も、山も、海も、何もかも同じでなくてはなりません。

こうして人々は、ひとり残らず、この事業にかり出されました。命令にそむく者は死刑だと、おどかされて。


人々ははじめに、地球と同じ大きさの球をのせる台を作りました。

その台こそ、いま目の前にある廃墟なのですと、ジジは説明した。


台を作ると、今度は、球そのものの製作にとりかかります。

そして球ができあがると、地球とそっくりになるように、細部に手が入れられた。

材料は、地球にあるもの。それを運んで、新しい地球を作る。

なもんですから、新しい地球が完成に近づくたび、古い地球はやせ細っていきました。


やがて、新しい地球は完成した。

その頃には、古い地球は、からっぽ。

全部、新しい地球に持って行ったから。

なので、人々は新しい地球に移り住んだ。


今までと何から何まで同じ、新しい地球。そこに、今までと同じ人たちが住む。

何から何まで今までと同じで、もとどおり。

マルクセンティウス・コムヌスはそれに気づくと、上衣で顔をおおって、どこかに姿を消しました。

どこに行ったかは、誰も知りません。


あおい顔をして聞いていたアメリカ人の婦人は、ジジに聞きました。

すると地球はどうなったの?


ジジはいつものように、すまして答える。

あなたが立っているじゃありませんか!

いまの世界はですね、その新しいほうの地球なんですよ。


真に迫った(しんにせまった)物語を話してのけた、ジジ。

でも、やりすぎたのか、婦人は悲鳴を上げて、逃げてしまいました。


おかげでこの時は、コインをかせげなかった…





モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)






<感想>


自然に湧いて出る物語には、何かが隠れているのかも。

ずっと奥から生まれるものだから、奥で何かに、つながっているのかも。


女帝は、金にならないクジラの赤ん坊を、金になる魚だと信じて、育て続けました。

きっと女帝も、途中でうすうす気づいたはず。

でも、止めるに止められなくなった。

「せっかく、ここまでやったんだから」


我々だって、実を結ぶはずのないことに、一生懸命になっているのかもしれない。

女帝と同じように、来るはずのないものをじっと待っていることも、あるのかもしれません。

でも、運の悪い人の場合、捨てた途端にそれが宝だと気づくこともあるので、要注意。


ただ、やっておくべきことを放っておくと、女帝のようになるかもしれないので、注意しないと。

来るかもしれない未来と、今ある現在。

女帝は未来に一生懸命になりすぎて、現在を放り出し、結果、現在を失いました。

未来に投資することは間違いではありませんが、現在と関係が切れてしまうと、危ういのかもしれません。

(といっても、「それ」をやらされる人が、出たりもするのですが…)


実は、ジジは、未来派人間。

現在より未来を優先させるタイプです。

そんなジジには、どんな未来が待っているかな?





赤い王の話も、興味深いですね。

我々は、世界が自分の思うようになればいいのにと、願ったりします。

別に支配しようとは思わないけど、思うようになってほしいとは思う。


でも、王のように気づきます。

結局、世界はいつものままだし、人は簡単には変わらない。


王は何から何まで同じ、新しい地球を作らせた。

でも、それでは、今までと同じでした。

場所が移っただけで、その場所だって、前のが無いから、区別がつかない。


王は世界を変えられませんでした。

たとえ王であっても、変えられるものはかぎられている。

自分と、自分の手の届く範囲以外は、なかなか変えられません。


そして人は王のように、自分自身や、自分の手が届く範囲のことは、なかなか手を出したがらなかったりします。



もし、出したら?

そうですね、

影との戦いが、はじまるのかもしれません…





影との戦い―ゲド戦記〈1〉 (岩波少年文庫)



一生を変えるほんの小さなコツ







 <<「(5) ジジと常識」
    「(7) 魔法の鏡と、心臓の結び目」>>




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Author:南方 城太郎
生息地:関西
分類:昭和人間
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黒電話、赤電話が主流で、冷房は扇風機、暖房は石油ストーブと炬燵という時代


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