ユング心理学の視点から見た日記。スーパー戦隊シリーズ キョウリュウジャー、トッキュウジャー、東のエデンのレビューと感想。エニアグラム、子どもが育つ魔法の言葉、話が通じない人の心理、自分に気づく心理学。ドラマやアニメから学ぶ人生観。
 
ミヒャエル・エンデ作

モモ
時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語


そのレビューと感想



第5回「ジジと常識」


(第4章「無口なおじいさんとおしゃべりな若もの」より、その後編)


モモのもうひとりの親友は、ベッポと正反対の人でした。

ベッポが年よりだったのに対し、こちらは若もの。

けっこうな器量よしで、夢見るような目をしていた。

そして、その下の口が、動く動く。

口から先に生まれたような、そういう形容がピッタリ。

たえず冗談を言って、へらず口をたたき、相手が思わずつられて笑ってしまうような、そんな笑い方をする。

彼の名前は、ジロラモ。でも、みんな、“ジジ”と呼んでいました。


ベッポは、道路掃除夫ベッポと呼ばれている。

ジジの場合は、観光ガイドのジジです。

でも、ジジは、決まった職業にはついていません。

彼は機会さえあれば、あれこれ手を出す。

そのうちのひとつが観光ガイドで、正式なガイドでもなかった。


ジジに観光ガイドとしてのシルシがあるとするなら、それは帽子でした。

観光客を見つけると、ジジはさっそく、この帽子を頭にのせる。

そして、もっともらしい顔をして近づくと、案内と説明をしてさしあげましょうと、申し出るのでした。

相手がのってくれば、しめたもの。ジジは、大ウソを、まくしたてます。


ウソの歴史、ウソの事件、ウソの人物、それを聞かされる、観光客。

中には、デタラメだと知って、怒る人もありました。

でも、たいていは本当の話だと信じ込み、ジジが最後に帽子を差し出すと、お金を入れてくれた。


そんな様子を、近所の人たちは、笑い話のタネにしていました。

でも、時々は、まゆをひそめ、デタラメの作り話で金もうけするなんて、と言うことも。


それに対し、ジジは反論しました。


詩人だって、そうじゃないか。

詩人に金を払う人は、ムダに金を捨ててるっていうのかい?

詩人からちゃんと、望みどおりのものをもらっているじゃないか!

学者の書いた本に出てくるか出てこないかなんて、そんなに違いがあるのかな?

学者の本に出てくる話だって、ただの作り話かもしれないじゃないか。

本当のことは誰にも分からないんだもの、そうだろう?


また、こうも言った。


本当だとか、ウソだとか、いったいどういうことだい?

千年も二千年も昔にここでどういうことがあったか、知ってるやつがいるってのか?

知らないならどうして、おれの話がウソだと言える?

ひょっとしたら、本当にそういうことがあったかもしれない。

そうだったら、おれの話は、正真正銘(しょうしんしょうめい)の事実だってことになるよ!


万事この調子で、ジジに口の勝負で勝つのは、困難でした。


そんなジジでしたが、観光客がこの円形劇場を見に来るなんてことは、めったになかった。

だから、あれこれと、他の仕事に手を出すしかありません。

公園の番人、結婚式の立会人、犬の散歩係、恋文の運び役、葬式の参列者、みやげもの売り、ネコのえさ売り、そのほか、たくさんの仕事をした。


ジジの夢は、いつか有名になって、お金持ちになること。

そうなったら、おとぎ話に出てくるような家に住んで、うんとぜいたくする。

そんな夢を思い描いていると、その名声の輝きが、今の自分を暖めてくれているように、ジジは感じます。

なので、夢を笑う人があると、ジジは怒りました。

「おれはやってみせるぞ! いまに思い知るときがくるからな!」


でも、どうやってその夢を実現させるか、ジジは自分でもはっきり言えませんでした。

いくらあたふた働いたところで、かせぐ金はしれている。


ジジはモモに、こう言いました。

「その気になれば、金持ちになるのなんか、かんたんさ」

「でもな、ちっとばかし いいくらしをするために、いのちもたましいも売りわたしちまったやつらを見てみろよ! おれはいやだな、そんなやり方は。たとえ一ぱいのコーヒー代にことかくことがあっても――ジジはやっぱりジジのままでいたいよ!」




このように、ジジとベッポは、正反対。

言うことも、していることも、違う。

人生観だって、真逆です。

でも、ふたりは、なかよしだった。

ジジを軽薄(けいはく)だと非難しない唯一の人がベッポで、変り者のベッポを笑わない唯一の人が、ジジでした。

といってもそれは、このふたりの話にじっと耳をかたむける少女、モモがいたからかもしれません。


三人のうち、誰も、自分たちの友情を疑っていませんでした。

そしてこの友情に、もうすぐ暗い影がさそうなどと、思ってもみなかった。

でも、その影は、三人だけでなく、この地方全体に、しのびよっていました。

じわじわと広がりながら、はやくも大都会の上に、暗くかぶさろうとしていた。


いつからか、灰色の男たちが、数を増しながら大都会をうろつくようになっていたのです。

ところが、誰も彼らに気づかない。

人の見ないものを見るベッポじいさんさえ、気づきません。

気味の悪いことですが、彼らは人目をひかない方法を心得ていて、そのため、人は彼らを見過ごすか、見てもすぐに忘れてしまうのです。

彼らは、姿を隠さない。

彼らはどこから来たのか、何人くらいいるのか、誰も気にしない。

その間に、秘密の仕事をこなします。


彼らは、しゃれた自動車で走り回り、家々に出入りし、レストランにすわる。

そして、しょっちゅう、小さなメモ帳に何やら書きこんでいました。

彼らは全身灰色で、服や靴(くつ)だけでなく、顔まで灰色。

小さな葉巻をくゆらせながら、灰色の書類カバンをかかえていました。


誰も、灰色の男には気づかない。

ベッポも、ジジも、気づかない。

でも、ある日、モモは見た。

廃墟(はいきょ)の一番高い縁(へり)の上に、彼らの黒い影が現れたのを。

彼らはヒソヒソと、何やら相談していました。

何を話しているか、声は聞こえませんでしたが、モモはふいに、これまで味わったことのないような、寒気におそわれました。

上着をしっかり巻きつけても、どうにもならない寒さ。


やがて灰色の男たちは帰って行き、それからは二度とあらわれませんでした。


そしてモモも、日がすぎるうちに、彼らのことを忘れていった…





モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)






<感想>


本当のことは誰にも分からないんだもの、そうだろう?

これは、ジジが自分のしたことを正当化するため、方便として使ったのかもしれない。

でも確かに、本当のことは誰も分からない、そういうことはありそう。


我々は社会で生きるために、ある程度の常識を身につけます。

でも、その常識が本当に当たり前のことなのか、分からないこともある。


人は言います。

「常識で考えれば、分かるよ」

でもね、それは、考えないことかもしれない。

常識だから、考えない。

常識だから、疑わない。


でも、その常識は、正しいのだろうか?

どこででも、いつでも、通用するのだろうか?


ある国とある国とでは、常識が違ったりする。

ある地方とある地方でも、同じ。

ある家族とある家族では、ってこともある。

場所が変われば、常識は変わるようです。


今と昔だって、同じじゃないですよね。

平安時代には平安時代の、江戸時代には江戸時代の、それぞれの常識がありそう。

今の常識から見ればおかしくても、当時はそれが常識だったりする。

そういう意味で、時間と共に、常識も変化する。


そんな常識ならば、今の常識が本当だとか、正しいとか、胸を張って言えるのだろうか?

時は流れる、時代は流れる、知らない間に、いろんなものが変わる。

ならば、気づかない内に、「場」が変わっていて、取り残された常識を信じ込んでいるなんてことは、ないのだろうか?


本当のことは、誰にも分からない。

特に、ただ信じ込んでいるだけでは、分からない。

じゃあ、分かるには、どうしたらいい?





「普通がいい」という病~「自分を取りもどす」10講 (講談社現代新書)




あなたは常識に洗脳されている






ベッポは、今を受け取ります。

今を受け取るのは上手だけど、それを言葉で説明するのは、苦手。


ジジは、未来を見つめます。

未来を見るのは上手だけど、それを今に活かすのは、ちょっと苦手。


みんなに得意なもの、上手なものがあって、

それと同時に、苦手だったり、下手なものがある。


カタチは違うけどね…





 <<「(4) ベッポと時間差のカラクリ」
    「(6) クジラの金魚と新しい地球の物語」>>




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Author:南方 城太郎
生息地:関西
分類:昭和人間
生まれ:
黒電話、赤電話が主流で、冷房は扇風機、暖房は石油ストーブと炬燵という時代


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