ユング心理学の視点から見た日記。スーパー戦隊シリーズ キョウリュウジャー、トッキュウジャー、東のエデンのレビューと感想。エニアグラム、子どもが育つ魔法の言葉、話が通じない人の心理、自分に気づく心理学。ドラマやアニメから学ぶ人生観。
 
ミヒャエル・エンデ作

モモ
時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語

そのレビューと感想



第3回「遊びの中のホンモノ」



(第3章「暴風雨ごっこと、ほんものの夕立」より)


モモを前に話していると、いろんなものが出てきた。

大人たちは、スッキリして、帰ってゆきます。

そしてそれは、子どもたちも同じ。

ただし、子どもたちは、主に遊びの中でそれを出したし、遊びとしてそれを出しました。

モモがいるだけで、なぜか楽しく遊べる。

何か特別なことをするわけじゃないけど、退屈しなくなる。

面白い遊びが、自然と浮かんできました。


ある蒸し暑い日のこと、10人ほどの子どもたちが、円形劇場で、モモの帰りを待っていました。

モモは近所をぶらつくのが好きだったのです。

けれど、空がだんだんとあやしくなってきた。

黒い雲におおわれてきて、今にも降りそうです。


女の子のひとりは「帰ろうかな」と言いましたが、他の子たちと話すうちに、モモがいなくても何かして遊ぼうということになりました。

この劇場を船に見立てて、航海ごっこをする。

みんなはその乗組員になり、冒険するのです。

言いだした男の子は、船長。別の子は、一等航海士。自然科学者もいれば、水夫もいる。

これは面白いと思ったみんなですが、なぜか、しっくりきません。

面白そうな遊びなのに、なぜか、やる気になれない。

まるで大事な何かが欠けてしまっているかのよう。


と、しばらくすると、モモが帰ってきました。


研究船<アルゴ号>は、波のうねりの中にあった。

船首に波が当たり、くだけます。

目指すは、南のサンゴ海。

しかし、この海域は危険極まりないものでした。

いたるところに、海の怪物が生息している。

そして一番厄介なのが、<永遠の台風>と呼ばれる大旋風(だいせんぷう)です。

この台風にやられると、どんな船も、ひとたまりもありません。


研究船<アルゴ号>は、この台風に備え、さまざまな装備が施されていました。

が、それでも、安全だという保障はない。

他の船長や乗組員なら、この危険海域に船を入れることはなかったでしょう。

でも、ゴルドン船長には、勇気があった。

そして、各分野の専門家である、乗組員たちを信頼していました。

歴戦練磨(れきせんれんま)の猛者(もさ)、ドン・メール一等航海士。

学術研究の指揮をとる、アイゼンシュタイン教授。

その助手の、マウリンとサラ。

この海の近くで生まれた、フーラ語で話す、モモザンもいる。


航海の目的は、<さまよえる台風>の原因をつきとめること。

そして、できれば、その原因を取り除くこと。

この海域を、おだやかなものにすることです。


突然、見張りの水夫が、大声を上げました。

前方に、ガラスの島が見えるというのです。


船長たちは、そのガラスの島に降り立ちました。

島はまんまるで、直径二十メートルほど。

真ん中は、丸屋根のように盛り上がっている。

島の内部では、光が脈打つように点滅しています。


マウリン助手はそれを、「ヒトクイオタフク・ビストロツィナリスらしい」と言いました。

サラ助手も、そうかもしれないと言う。でも、「オオグライ・タペトツィフェラだとも考えられる」とも言います。

ただ、アイゼンシュタイン教授の見立てでは、「ふつうのオバケアシ・チューチューネンススの一変種」だということでした。ただ、調べてみないと何ともいえない。


三人の女性水夫が、海に飛び込み、姿を消しました。

彼女たちは、スポーツ・ダイバー。

潜水のプロです。


やがてサンドラという女の子が浮かび上がってきて、叫びました。

オバケクラゲが出たのだという。

他の女の子は、クラゲの腕につかまってしまった。


救援要請(きゅうえんようせい)を受け、カエル部隊が海に飛び込みます。

指揮するのは、イルカとあだ名された老練な、フランコ隊長。

水中では、激しい戦闘が繰り広げられました。

しかし、カエル部隊をもってしても、オバケクラゲからふたりの潜水士を救い出すことはできない。


そこで船長と、ドン・メール一等航海士が相談し、あることを決断します。

ドン・メールはまず、カエル部隊を船に引き上げさせました。

そして<アルゴ号>を、オバケクラゲめがけて、突進させた。


<アルゴ号>の鋼鉄のへさきは、見事、オバケクラゲを真っ二つに引き裂いた。

そして、ふたりの潜水士も、無事、救われました。


ふたりを歓声で迎える、乗組員たち。

しかし、危機が去ったわけでは、ありません。

救出作業をしている間に、<さまよえる台風>が近づいてきていたのです。

激しく上下する、<アルゴ号>。

まるで谷底にでも、落とされたかのよう。

それでも、ゴルドン船長は冷静でした。甲板で、でんと構えている。

乗組員たちも、適切に作業していました。

ただ、海のむすめモモザンだけは、救命ボートに潜り込んでいた。

乗組員たちと違って、嵐にはなれてないのです。


世界は一変していました。

空は真っ黒になり、暴風雨が打ちつける。

風はまるで殴るように、船を叩きます。

波はまるで、船を打ちつけて壊そうとしているかのよう。


そんな中、船長は落ち着いた様子で、指示を出しました。

ドン一等航海士が、それをみんなに大声で伝える。

アイゼンシュタイン教授と助手たちは、台風の目を探していました。

船を台風の目に入れるため、位置を計算している。

過酷な状況の中、誰もがプロフェッショナルとして務めを果たしています。


数々の苦難が、船を襲いました。

落雷、それによる赤熱、息もできないような猛烈な雨。

大波はまるで、山のようです。


それでも<アルゴ号>は進んだ。

エンジンをフル回転して、台風に逆らうように、少しずつ進む。

機関室もまた、戦闘状態です。


そしてついに、<アルゴ号>は台風の目にたどり着きました。

!!

そこでみんなは、不思議な光景を目にした。

海面は、暴風によって平らに吹き払われ、鏡のようになっている。

その上で、巨大な怪物が踊っているのです。

一本足で立ち、まるで巨大なコマのように、怖ろしい速度で回っている。


教授がうれしそうに、叫びました。

「シュム=シュム・グミラスティクムだ!」

この怪物は、地球が生まれた最初の時期からの生き残り。今では顕微鏡でしか見えないような小さな変種しか残っていないはずです。

それが、巨大な姿で、目の前にいる。


船長は、航海の目的を忘れてはいませんでした。

みんながここにいるのは、<永遠の台風>の原因を取り除くため。

船長は教授に、この怪物をおとなしくさせる方法を聞いた。


が、それは、教授にも分かりませんでした。

そこで船長は、まず、大砲を一発、撃ち込んでみることに。


対怪物砲が、発射されます。

青い火炎が、怪物に向かっていった。

しかし、長い炎は、怪物をかこむ つむじ風に巻かれて、空に消えてしまいました。


こうなると、船長も、教授も、打つ手なし。

このまま引き返すしかないのか。


その時、誰かが、教授のそでを引っ張りました。

あの、うつくしい海のむすめです。

「マルンバ!」と、モモザンは言った。優雅な身振りをしながら。

彼女がフーラ語で伝えたのは、古い歌について。

民族に伝わる古い歌をつむじ風に向かってうたう勇気ある人がいれば、<さまよえる台風>はおとなしく眠り込んでしまう。

そんな言い伝えがあるというのです。


教授はそれを信じました。

はじめから偏見をもってかかるのは、よくない。原住民の言い伝えの奥ふかくには、真実がひそんでいることが多い。科学的な根拠が、そこにはあるのかもしれません。


船長は断をくだし、ためしてみることに。

教授はモモザンに、フーラ語でそれを伝えました。


「エニ メニ アルーベニ
 ヴァナ タイ スースラ テニ!」

モモザンは、歌にあわせて手を叩きながら、ピョンピョンと跳びまわりました。

それは言葉も、メロディーも、単純なものだった。だから、誰にでも、おぼえられました。

なので、乗組員たちが次々と加わり、やがて全員が、声をあわせ、手を叩き、飛び跳ねた。

ベテランのドン・メールや、教授まで、子どものように手を叩き、踊る。


すると、信じられないことが起こりました。

怪物は回転速度を落とし、しまいには止まって、海に沈みはじめたのです。

コマの怪物が姿を消すと、同時に嵐はピタリとやみました。

雨はいつの間にか上がって、空は晴れ渡っている。

海は穏やかで、今までのことがまるで幻のよう。


「諸君」と、ゴルドン船長は言いました。

「ついに成功した!」

そして、ふだん口数の少ない船長が、めずらしく一言つけ加えた。

「諸君のことを、わたしは誇りに思う!」




冒険が終わってやっと、女の子は雨に濡れたのを知った。

遊んでいる間に夕立が来て、びしょ濡れになっていました。

子どもたちはしばらく冒険についておしゃべりを続けていましたが、やがてそれぞれ、家に帰ってゆきました。

服を乾かさないといけません。


みんなの中でひとりだけ、航海の結末に不満を持った子がいたようです。

メガネの男の子は、別れ際にモモに言いました。

あれは残念だった。シュム=シュム・グミラスティクムをあっさり水に沈めるなんて。あの種の生物のたった一匹の生き残りだったのに。

「ほんとうはぼく、もっとよく研究したかったんだ」


そんな意見もありながら、あることについては、みんな意見が一致していました。

モモと一緒のときほど、たのしく遊べるときはない!





モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)






<感想>


子どもの遊びは、真剣。

だってそこには、ホンモノがあるから。

「ごっこ」は、何かになりきること。

「なりきる」とは、「すっかりそのものになる」こと。


プロレスごっこでは、プロレスラーになりきる。

ライダーごっこでは、ライダーになりきる。

○○ごっことは、○○になりきること。

だから真剣に入り込める。


モモは、遊びの達人でもあったようです。

それも、自分だけが入り込むのではない。

みんなを入り込ませる。

モモと一緒にいると、自然と、何かに、なりきることができます。

そのものズバリに、変身しちゃう。


不思議な女の子、モモ。

大人は詰まったものを出しちゃうし、子どもはいろんなものになりきる。

その時その時を、自然に生きちゃう。


「させる」ことなく「そうなっちゃう」なんて、モモとはなんと不思議な女の子なんでしょう…





子どもが育つ魔法の言葉 (PHP文庫)




子どもの宇宙 (岩波新書)






「ごっこ」を笑いますか?

大人はけっこう、忘れてますよ。

ホンモノになることを。


籍や役割を与えられるのと、ホンモノのそれになっているかは、別。

呼び名は「それ」でも、「それ」になれているかは、また別の話。


子どもは「ごっこ」の中で、ホンモノの「それ」になろうとします。

だから、時々、大人も驚くようなことを言う。

ホンモノっぽいことを…





 <<「(2) 何も持ってない、特別な女の子」
    「(4) ベッポと時間差のカラクリ」>>




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Author:南方 城太郎
生息地:関西
分類:昭和人間
生まれ:
黒電話、赤電話が主流で、冷房は扇風機、暖房は石油ストーブと炬燵という時代


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